最終更新:2026年10月25日
この記事でわかること
- 長生きする生き物のランキングと、それぞれの寿命
- 「長生き」と「老化しにくい」の違い
- 長寿の生き物に共通する、老化しにくい5つのしくみ
- 長寿の生き物の研究から、人間が学べること
長生きする生き物ランキング
地球上には、人間よりはるかに長く生きる生き物がいます。研究で寿命が推定されている、代表的な長寿の生き物を紹介します。
| 順位 | 生き物 | 寿命(推定・記録) | ひと言 |
|---|---|---|---|
| 1 | アイスランドガイ(二枚貝) | 507年 | 貝殻の年輪から推定。動物で確かめられた最長寿の一つ |
| 2 | ニシオンデンザメ | 約400年(272〜512年) | 目のレンズで年齢を推定。脊椎動物で最も長生き |
| 3 | ホッキョククジラ | 200年以上 | 哺乳類で最も長生き |
| 4 | ヒト | 122年(最長記録) | 1997年に亡くなったフランスの女性の記録 |
| 5 | ホオヒゲコウモリの仲間 | 41年 | 体重わずか7gほどなのに、40年以上生きた記録がある |
| 6 | ハダカデバネズミ | 30年以上 | ネズミの仲間なのに、マウス(2〜3年)の10倍以上 |
この表には入れていませんが、樹木では数千年生きるものもあります。また、ベニクラゲのように、条件によっては若い姿に戻ることを繰り返す生き物もいます(あとで紹介します)。
ここで注目したいのは、数字の大きさだけではありません。体の小さなコウモリやハダカデバネズミが、同じくらいの大きさの動物に比べて何倍も長く生きていることです。これは、寿命が体の大きさだけでは決まらないことを示しています。
「長生き」と「老化しにくい」は違う
長寿の生き物を考えるときに、区別しておきたいことがあります。それは「長生きすること」と「老化しにくいこと」の違いです。
多くの動物では、年をとるほど体の働きが落ち、病気や死亡の危険が高まっていきます。人間でも、年齢が上がるにつれて、1年あたりに亡くなる人の割合は大きく上がります。これが、一般にいう「老化」です。
ところが、ハダカデバネズミでは、3,000匹以上の飼育記録を調べたところ、年をとっても死亡の危険がほとんど上がらなかったと報告されています(2018年)。このため、「老化しない哺乳類」と呼ばれることがあります。ただし、観察期間が十分ではないという指摘もあり、研究者の間でも議論が続いています。
つまり、長寿の生き物の中には、「長く生きる」だけでなく、「年をとっても体が衰えにくい」ものがいるのです。研究者が注目しているのは、まさにこの「老化しにくさ」のしくみです。
なぜ長生きできるのか ― 長寿の生き物に共通する5つのしくみ
長寿の生き物を調べると、それぞれ違うやり方で、体を老化から守っていることがわかってきました。代表的な5つのしくみを紹介します。
① 体が大きく、生き方がゆっくり
一般に、体の大きな動物ほど長生きする傾向があります。ゾウやクジラは長生きで、ネズミの仲間は短命です。体の大きな動物は、体の大きさのわりにエネルギーを使う速さ(代謝)がゆっくりしていることが多く、これが長生きと関係すると考えられてきました。冷たい深海に暮らすニシオンデンザメも、成長がとてもゆっくりしていることが知られています。
ただし、コウモリやハダカデバネズミのように、体が小さくても長生きする動物がいます。体の大きさや代謝だけでは、寿命は説明しきれません。
② DNAの傷を、正確に直す
細胞の設計図であるDNAは、毎日のように傷ついています。傷が直されずに残ると、細胞が老化したり、がん化したりします。
2025年には、哺乳類で最も長生きするホッキョククジラの細胞が、DNAの傷をとても正確に、すばやく直していることが報告されました。寒さで働きが高まる「CIRBP」というタンパク質が、クジラの細胞にたくさんあり、DNAの修復を助けていると考えられています。このタンパク質を多く働かせたショウジョウバエでは、寿命が延びたことも報告されています。
③ がんを防ぐしくみが強い
体が大きく、長く生きるほど、細胞が分裂する回数は増え、がんになる危険も高まるはずです。ところが、ゾウやクジラはがんになりにくいことが知られています。
たとえばゾウは、がんを防ぐ遺伝子「p53」を約20個(ヒトは1個)持っていて、DNAが傷ついた細胞を取り除く力が強いと報告されています。ハダカデバネズミも、細胞のまわりに特殊な物質(分子の大きいヒアルロン酸)を多く持ち、細胞が増えすぎないようにする働きがあると考えられています。
④ タンパク質の品質を保つ
細胞の中では、さまざまなタンパク質が作られ、働き、古くなると分解されています。タンパク質が正しく作られ、傷んだものがきちんと片づけられることは、細胞が若さを保つうえでとても大切です。
ハダカデバネズミは、マウスに比べてタンパク質をより正確に作り、タンパク質が傷みにくいことが報告されています。横浜市立大学の研究チームは、細胞の中に傷んだタンパク質などの「ごみ」がたまり、タンパク質のバランスが崩れることが、細胞を老化させる大きな要因だと考えてきました。長寿の生き物が「タンパク質の品質管理」に優れていることは、この考え方とも重なります。
⑤ 若返り・再生する力
さらに驚くべき生き物もいます。ベニクラゲは、成長したクラゲが傷ついたり弱ったりすると、赤ちゃんの段階(ポリプ)に戻り、ふたたび成長することができます。2022年には、ベニクラゲの遺伝子が詳しく調べられ、DNAの修復や、細胞を若い状態に戻すことに関わる遺伝子が、近い仲間のクラゲより多いことが報告されました。
また、ヒドラという小さな生き物は、体の細胞を常に入れ替え続け、老化の兆しがほとんど見られないことで知られています。メキシコサンショウウオ(ウーパールーパー)は、手足や心臓の一部を失っても再生できる力を持っています。
ハダカデバネズミ ― 「老化しない哺乳類」と呼ばれる理由
ハダカデバネズミは、アフリカの地下にトンネルを掘って暮らす、体長10cmほどのネズミの仲間です。毛がほとんどなく、大きな前歯が特徴です。
同じくらいの大きさのマウスの寿命は2〜3年ですが、ハダカデバネズミは30年以上生きます。しかも、年をとっても繁殖を続け、体の働きもあまり衰えないことが知られています。
ハダカデバネズミの長生きの理由として、これまでに次のような点が報告されています。
- がんにほとんどならない(細胞が増えすぎないしくみを持つ)
- タンパク質を正確に作り、傷みにくい
- 酸素の少ない環境でも生きられ、ストレスに強い
- 年をとっても死亡の危険がほとんど上がらない
ひとつの特別なしくみがあるのではなく、いくつもの守りのしくみを組み合わせて、体を老化から守っていると考えられています。
ニシオンデンザメ ― 400年を生きるサメ
ニシオンデンザメは、北極に近い冷たい海の深いところに暮らす、体長5mほどになる大型のサメです。2016年、目のレンズに含まれる成分を調べて年齢を推定したところ、最も大きな個体は約400年(少なくとも272年)生きていたと報告されました。脊椎動物(背骨のある動物)では、最も長生きだと考えられています。
このサメは、1年に1cmほどしか成長しないとされるほど成長がゆっくりで、大人になるまでに100年以上かかると推定されています。冷たい環境で、すべてがゆっくり進む生き方が、長い寿命と関係していると考えられています。
ホッキョククジラ ― 200年を生きる哺乳類
ホッキョククジラは、北極の海に暮らす体長15m以上になる大型のクジラです。体の組織に含まれる成分を調べて年齢を推定したところ、200歳を超える個体がいたと報告されています。哺乳類では最も長生きだと考えられています。
これほど体が大きく、長く生きると、体の中で細胞が分裂する回数はとても多くなります。細胞が分裂するたびにDNAが傷つく機会が増えるため、本来ならがんになる危険も高まるはずです。ところが、ホッキョククジラはがんになりにくいことが知られています。この謎を解く手がかりとして注目されているのが、先に紹介した「DNAの傷を正確に直す力」です。がんになりそうな細胞を取り除くのではなく、傷そのものを正確に直すことで、細胞を健康に保っていると考えられています。
コウモリ ― 小さな体で40年を生きる
一般に、体の小さな哺乳類ほど寿命が短い傾向があります。ところが、コウモリは例外です。シベリアで見つかったホオヒゲコウモリの仲間は、体重わずか7gほどですが、野生で41年生きた記録があります(記録された当時はブラントホオヒゲコウモリとされていましたが、その後の研究で、シベリアのものは別の種類に分けられています)。同じくらいの大きさのネズミの仲間と比べると、10倍以上も長く生きていることになります。
コウモリが長生きできる理由はまだ完全にはわかっていませんが、空を飛ぶために多くのエネルギーを使う体に、細胞を傷から守るしくみや、炎症を抑えるしくみが備わっているためだと考えられています。コウモリも、長寿の研究で注目されている生き物の一つです。
ベニクラゲ ― 「不老不死」と呼ばれるクラゲ
ベニクラゲは、大きさ数mmほどの小さなクラゲです。多くのクラゲは、成長して子孫を残すと一生を終えます。ところがベニクラゲは、弱ったり傷ついたりすると、体を縮めて赤ちゃんの段階に戻り、そこからまた成長を始めます。これを繰り返すことができるため、「不老不死のクラゲ」と呼ばれています。
ただし、実際の海では、ほかの生き物に食べられたり、病気になったりして死ぬことも多く、すべてのベニクラゲが永遠に生きるわけではありません。「若返りを繰り返す力がある」というのが、より正確な言い方です。
長寿の生き物から、人間は何を学べるのか
長寿の生き物が持つしくみは、人間の老化を理解し、健康に長く生きる方法を考えるための大切なヒントになります。実際に、ホッキョククジラのDNA修復のしくみや、ハダカデバネズミのがんを防ぐしくみを、人間の健康に役立てようとする研究が進められています。
一方で、気をつけたいこともあります。
- 動物のしくみが、そのまま人間に当てはまるとは限りません。 暮らす環境も体のつくりも、人間とは大きく違います。
- ひとつのしくみだけで、長生きしているわけではありません。 長寿の生き物は、DNAの修復、がんの予防、タンパク質の品質管理など、いくつもの守りを組み合わせています。
研究チームは、細胞の老化と若返りの研究を約40年続けてきました。長寿の生き物が教えてくれるのは、「体を老化から守るには、多くのしくみがバランスよく働くことが大切だ」ということです。細胞の老化については研究コラム「老化細胞とは?」で、老化した細胞を若い状態に戻す研究については「若返りは可能か?」で詳しく紹介しています。
よくある質問
Q. 世界で一番長生きする動物は何ですか?
A. 寿命が確かめられている動物では、二枚貝のアイスランドガイ(507年)が最も長生きとされています。背骨のある動物ではニシオンデンザメ(約400年)、哺乳類ではホッキョククジラ(200年以上)が最も長生きだと考えられています。
Q. ハダカデバネズミは、なぜ長生きなのですか?
A. がんにほとんどならないこと、タンパク質を正確に作り傷みにくいこと、ストレスに強いことなど、いくつもの守りのしくみを持っているためと考えられています。年をとっても死亡の危険がほとんど上がらないことから、「老化しない哺乳類」と呼ばれることもあります。
Q. 長生きする生き物に、共通点はありますか?
A. 体の大きさや暮らす環境はさまざまですが、DNAの傷を正確に直す、がんを防ぐ、タンパク質の品質を保つなど、細胞を傷から守るしくみが優れている点は共通しています。ひとつのしくみに頼るのではなく、いくつもの守りを組み合わせていることも特徴です。
Q. 不老不死の生き物は、本当にいるのですか?
A. ベニクラゲのように、若い段階に戻ることを繰り返せる生き物はいます。ただし、食べられたり病気になったりすれば死ぬため、本当の意味で「死なない」わけではありません。「老化をほとんど示さない生き物」と考えるのが正確です。
まとめ
- 長寿の生き物には、500年以上生きる貝、約400年生きるサメ、200年を超えるクジラなどがいる。
- 体の小さなハダカデバネズミやコウモリも長生きで、寿命は体の大きさだけでは決まらない。
- 長寿の生き物は、DNAを正確に直す、がんを防ぐ、タンパク質の品質を保つ、若返り・再生するなど、いくつものしくみを組み合わせて老化から体を守っている。
- 動物のしくみがそのまま人間に当てはまるわけではないが、人間の老化を理解し、健康に長く生きるための大切なヒントになる。
関連ページ
引用・参考文献
- Nielsen J, et al. Eye lens radiocarbon reveals centuries of longevity in the Greenland shark (Somniosus microcephalus). Science. 2016.
- Firsanov D, et al. Evidence for improved DNA repair in the long-lived bowhead whale. Nature. 2025.
- Ruby JG, et al. Naked mole-rat mortality rates defy Gompertzian laws by not increasing with age. eLife. 2018.
- Azpurua J, et al. Naked mole-rat has increased translational fidelity compared with the mouse, as well as a unique 28S ribosomal RNA cleavage. PNAS. 2013.
- Tian X, et al. High-molecular-mass hyaluronan mediates the cancer resistance of the naked mole rat. Nature. 2013.
- Abegglen LM, et al. Potential mechanisms for cancer resistance in elephants and comparative cellular response to DNA damage in humans. JAMA. 2015.
- Pascual-Torner M, et al. Comparative genomics of mortal and immortal cnidarians unveils novel keys behind rejuvenation. PNAS. 2022.
- Podlutsky AJ, et al. A new field record for bat longevity. The Journals of Gerontology: Series A. 2005.
- López-Otín C, et al. Hallmarks of aging: An expanding universe. Cell. 2023.
※本記事は老化研究に関する一般的な科学情報を紹介するものであり、特定の疾病の診断・治療・予防や、特定の製品の効果を示すものではありません。動物・細胞レベルの研究を含みます。

