AGING RESEARCH

老化は、運命ではない。

「加齢」が時間の経過を指すのに対し、「老化」は体内に老化細胞が蓄積し、組織や器官が機能を失っていくプロセスです。かつて老化は遺伝子に組み込まれた宿命と考えられてきました。しかし近年の研究では、早老症などの遺伝性疾患を除く健常な成人では、遺伝子の影響はおよそ2割にすぎず、大半は生活習慣や環境によることが分かってきました。

老化とは、細胞が老いること

CELLULAR AGING

老化がなぜ起きるのか、長いあいだ分かっていませんでした。近年になって明らかになったのは、老化とは、体のなかで「老化細胞」が増えていくことだったのです。

若いからだ 老化細胞はわずか 老廃物・有害物質がたまる 老化細胞が増えていく 老いたからだ 老化細胞が蓄積している
正常な細胞 老化細胞

細胞が老化すると、細胞機能が低下し、分裂を停止します。やがて組織や器官の機能が落ち、最後に生命の機能そのものが衰えていきます。老化はこうした積み重ねとして起こります。

細胞の機能が落ちる
組織・器官の機能が落ちる
生命の機能が落ちる
培養したヒト皮膚の若い細胞の顕微鏡写真。正常な形態で活発に増殖している。
若い細胞正常な形態で活発に増殖している状態
培養したヒト皮膚の老化細胞の顕微鏡写真。肥大化・扁平化し、増殖が止まっている。
老化細胞細胞が肥大化・扁平化し、増殖が止まった状態

当社研究室で撮影した、ヒトの皮膚細胞です。

老化を決めるのは、遺伝子より環境

GENES vs ENVIRONMENT

20%
80%
遺伝子生活習慣・環境

老化の8割は、生活習慣と環境で変わる。
だからこそ、働きかける余地がある。

※ 早老症などの遺伝性疾患を除く、健常な成人についての知見です。

老化の根本原因は、老廃物の蓄積

POLLUTION

食事やエネルギー代謝の過程で生じる老廃物、そして外部から入る有害物質が細胞内にたまること。これが老化の根本にあると考えられています。

変性・凝集した
タンパク質
核酸の
分解物
酸化した
脂質
AGEs
(糖化産物)
外部からの
有害物質

細胞老化の「不均衡増殖モデル」

UNBALANCED GROWTH MODEL

なぜ老廃物がたまると細胞が老化するのか。その仕組みを説明するのが、私たちの研究チームが提唱する「不均衡増殖モデル」です。

老化誘導因子(老廃物・有害物質)がたまる
DNAの複製が
遅れる
タンパク質の合成は
続く
細胞内にタンパク質が過剰にたまり、細胞と核がふくらむ
DNAを折りたたんでいた構造(ヘテロクロマチン)がゆるむ
眠っていた「老化関連遺伝子」が働き出す → 細胞が分裂を止め、老化する
当社研究チームが提唱する中核モデル

核内で、何が起きているのか

NUCLEAR STRUCTURE

上のモデルの4段目——「遺伝子を折りたたむ構造がゆるむ」。ここで実際に何が起きているのかを、もう一段だけ詳しく見てみます。

正常な細胞の核 老化関連遺伝子 OFF LBRがヘテロクロマチンを 核膜につなぎ止めている 核が膨張する LBRが核内膜から 遊離する 老化した細胞の核(膨張) 老化関連遺伝子 ON つなぎ止めを失い、ヘテロクロマチンが弛緩する
HC=ヘテロクロマチン(heterochromatin)LBR=ラミンB受容体(lamin B receptor)

核膜の内側には LBR(ラミンB受容体) というタンパク質があり、固く折りたたまれたDNAの塊——ヘテロクロマチン——を核膜につなぎとめています。折りたたまれている間、その中の遺伝子は働きません。

ところが細胞と核が膨らむと、この LBR が核内膜から遊離します。つなぎ止めを失ったヘテロクロマチンは弛緩し、DNAの巻き取り単位であるヌクレオソーム構造が不安定になります。

その結果、それまで抑えられていた老化関連遺伝子の発現が誘導され、細胞は老化形質を示し、分裂能を失います。核膜のタンパク質が外れることが、遺伝子のスイッチにつながっている——これが不均衡増殖モデルの核心部分です。

当社の研究チームは、2001年にヘテロクロマチンによる老化関連遺伝子の不活性化を発見し、2018年にその発現制御の機序を解明しました。

老化は、段階的に進む

MULTI-STEP AGING

人の体は一定の速さで老いるのではありません。ある年齢、たとえば44歳前後60歳前後で、体を構成するタンパク質・脂質・代謝物・腸内細菌叢などが急激に変化することが分かっています。

44歳前後60歳前後
20代40代60代80代

2つの節目で、体は大きく変わる。変化の時期を知ることが、対策の第一歩になります。

研究の背景にある主な論文

KEY PAPERS

タンパク質合成を抑えると、老化誘導剤があっても細胞は老化しない。老化細胞が分裂を再開(若返り)することを実証
Takauji Y et al., Scientific Reports, 2016
ヒトの分子・微生物叢が、40代半ばと60代前半で非線形に大きく変化することを解明
X. Shen et al., Nature Aging, 2024
PRESS RELEASE

生命ナノシステム科学研究科 鮎澤大教授の研究グループが、細胞の老化防止メカニズムを発見!

横浜市立大学 2016年1月21日 プレスリリース
高氏裕貴・藤井道彦・鮎澤大 / Scientific Reports(2016年1月5日オンライン版)掲載

横浜市立大学の発表を読む →

※ 本ページは老化に関する研究知見の紹介です。特定の製品の効果・効能を示すものではありません。

NEXT老化は戻せるのか老化の仕組みが分かれば、若返りは可能なのでしょうか。老化した細胞が、ふたたび分裂を始めることを実証した研究をご紹介します。若返り研究を読む →
RESEARCH COLUMN老化・不老と若返りの研究コラム細胞の老化・不老と若返りに関する研究の話題をご紹介しています。研究コラムを読む