昨今、新型コロナウイルス治療薬への関心が高まっています。アーユルヴェーダ研究者の立場からその対応策を考察します。西洋医学では、おもに二種類の抗ウイルス薬が古くから使われています。一つはウイルスゲノム(DNAまたはRNA)の合成を阻害する核酸アナログ(代表例:インフルエンザ治療薬アビガンとエボラ治療薬レムデシビル)、もう一つはウイルス構成タンパク質の前駆体を切断するプロテアーゼ阻害剤(代表例:エイズ治療薬カレトラ)です。ただし、これらの効果は限定的であり、副作用があります。RNAワクチンもよく用いられますが、製造と評価にはまだ時間がかかります。
東洋医学(アーユルヴェーダや中医学)では、抗ウイルス用ハーブ製剤が多数考案され、豊富な治療実績と研究データが蓄積しています。ただし、これらの事実は日本の医療関係者にはよく知られていないようです。欧米では日本より東洋医学の理解が広がっています。新型コロナに感染したチャールズ皇太子は、アーユルヴェーダで事なきを得ました。アーユルヴェーダのハーブ製剤は、ウイルスの細胞への感染から遊離に至る各段階を阻害します。また、免疫機能の増強や調和に作用し、健全なウイルス防御機構の獲得を助けます。多くの種類のウイルスに効果があり、副作用が少ないという利点もあります。
最近、新型コロナウイルスの病状に関して一定の評価が得られました。軽症者が多い反面、一部の患者に急性呼吸器不全が見られます。ただし、重症肺炎を誘発する特異抗原と特異体質はまだ特定されていません。致死的な呼吸器不全とは、インフラマソーム依存および非依存的な炎症誘導因子の過剰な分泌(サイトカインスーム)、炎症性のプログラム細胞死(パイロトーシス)の誘発、肺胞および毛細血管の破壊、呼吸困難の発症と続く一連の生理反応とされています。ただし、炎症性細胞死は炎症臓器一般にみられる現象です。毎年、肺炎球菌、インフルエンザウイルス、マイコプラズマ等によって重症肺炎が発生しています。急激な重症肺炎を抑制すれば、新型コロナは怖れる必要はありません。マスメディアの非科学的かつ無責任な論調に惑わされることなく、冷静な科学的な判断が求められます。アーユルヴェーダの真髄は、科学的態度の維持と継承です。
インドの「AYUSH省(伝統医学省)」は新型コロナに対処するハーブ製剤をいくつか推奨し、国民に提供しています(代表例を下記に示す)。我々もバングラデシュの伝統医学財団「Ayurved and Unani Foundation of Bangladesh」と提携し、いくつかの有力なハーブレシピを紹介しています。また、ラサーヤナ製剤(健康長寿飲料)は最高の抗ウイルス剤と位置づけられています。日本においても、ハーブ製剤の普及は急務であります。アーユルヴェーダの抗ウイルスレシピを分析すると、タンニンを含むことがわかりました。我々は、アーユルヴェーダの代表的な素材であるアムラ果実の主要有効成分が、タンニンであることを同定しています(特許出願中)。同じく有名なボヘラやハリタキも良質のタンニンを豊富に含みます。
タンニンとは多数のフェノール性水酸基をもつ没食子酸誘導体のことです。古くから皮のなめしに使われてきたので、この名が付きました。構造的には、没食子酸やエラグ酸などの芳香族化合物とグルコースなどがエステル結合した加水分解性タンニンとフラバノール骨格をもつ化合物が重合した縮合型タンニンの二種類に分類されます。タンパク質などの高分子に結合しやすく、多彩な生理作用を発揮します。動物および細胞レベルで抗炎症作用や抗酸化作用が実証されています。これらの作用が細胞炎症死の抑制や健全な免疫獲得に有利に働くと考えられています。
タンニンはハーブ以外に、緑茶にも豊富に含まれています。緑茶タンニンの主成分はエピガロカテキンとその誘導体であり、縮合型タンニンと加水分解性タンニンの重合体です。これらは紅茶には含まれていません。また、コーヒーはタンニンを豊富に含むとされていますが、これはクロロゲン酸というタンニンとは異なる物質です。上記のように、アーユルヴェーダ製剤の利用が最も有効ですが、国際物流が停滞している現状においては、入手が非常に困難となっています。そこで、代替品として緑茶を推奨します。毎日、朝昼晩の3杯以上飲むことを推奨します。ちなみに、緑茶の摂取量が多いアジア各国、とくに摂取量の多い県/州では、新型コロナの死亡者が極端に少なくなっています。
<参考文献>
<インドAYUSH省の推薦レシピ>
趣旨: AYUSH省(Ministry of Ayurveda, Yoga & Naturopathy, Unani, Siddha and Homoeopathy)はCOVID-19の拡大に対処するために、国民に対してアーユルヴェーダの簡単なハーブレシピを推奨しました。インド首相は国民向けの演説(2020年4月14日)や州政府への通達(2020年4月24日)を通してこのレシピを紹介しました。この薬品名は、Ayush Kwath、Ayush Kudineer、Ayush Joshandaなどと呼ばれ、免疫機能の増強等を目的とする煎じ薬または飲料のことです。AYUSHは市井の製造業者に製造許可を与えるよう州政府に要請しています。
組成表:
No.
一般名称
学名
部位
配合比
1
ホーリーバジル
Ocimum sanctum
葉
4
2
シナモン
Cinnamomum zeylanicum
樹皮
2
3
ショウガ
Zingiber officinale
根茎
2
4
黒コショウ
Piper nigrum
果実
1
飲み方:各植物乾燥体から粗挽きの粉末を作成します。上記配合比で混合し、ティーバッグ等の袋に3gずつ封入します。これを150mlの熱水で抽出し、毎日1-2回摂取します。飲みやすくするために、ヤシ糖、レーズン、レモンジュース等を加えることも可能です。
イチバンライフ株式会社 (文責:鮎澤大)


